未明、黎明、夜明け

 「夜明け」という言葉が好きだ。日本語でも好きだし、英語の”Dawn”という響きも好きだ。ゆっくりと太陽が昇り、私を理解してくれなさそうな深い青に灯りが差し、やわらかくなるあの瞬間が好きだ。夜明けは厳しさの中にふっと優しさをのぞかせて、私はとてもほっとする。

 大好きな『アルケミスト』という本にこういった一節がある。

 

少年は自分の国の古いことわざを思い出した。それは、夜明けの直前に、最も暗い時間がくる、というものだった。


人生で苦しいとき、この一節は自分の夜明けを信じて待つことを助けてくれる。

 

日々ぽろぽろとこぼれていく思考の断片を書き残したいという欲求。

自分の夜明けのために、手のひらからこぼれていく断片をとどめておくこと。

ここに”夜明けのための断片”と題して残すことにした。

そして欲張りにもその断片が、まだ見ぬ誰かに壜の中でひらかれることを待ちながら漂流する言葉のように、いつか届くことを密かに切望して。